「安らかに、成仏してくれよ」
土をかぶせて手を合わせる。俺に出来るのは、これくらいだ。
征志ならこんな時、魂を安らかに送る呪言の一つも、知ってるんだろうけどな。
「お兄さん」
不意に声がして、俺はピクリと体を強張こわばらせた。この、感覚は……。
目を見開いて、声のした方にゆっくりと顔を向ける。
俺の真横に、少年が立っていた。白いシャツに白い半ズボンをはいて、人なつっこい笑顔を浮かべている。歳は、十歳くらいか。
「おっまえ……いつのまに……」
ちょっと待て。ついさっきまでは、誰もいなかったはずだ……。
驚愕に引きつる俺の顔をまじまじと見上げながら、少年は袖を引っ張る。
「ねえ、泣いてるの?」
不思議そうに言う少年の指が、俺の頬を伝う涙に触れる。
「あ……っ、これは……」
言って、少年の指が異様に冷たい事に気がついた。少年からは視線を外さず、ガッと手首を掴む。
やはり、冷たい。まるで氷のようだ。
手首を掴む俺の力に、少年が一瞬顔をしかめる。だがすぐ真顔に戻った少年は、同じ言葉を繰り返した。
「泣いてるの?」
「…………」
「泣いてるの? ボクのために、泣いてるの……?」
「え…っ?」