「なあ爆豪。腹、減ったな」
補講の帰り。隣を歩く轟がそう話しかけてくる。
人がわざわざスマホで音楽聞いてんのを、何故だと思ってやがんだろなコイツは。
しばらく無視して、そのまま歩き続ける。
「お前は、減ってねぇか?」
俺は減ったな、とひとり腹をさすっている。チラリと見たのを気づかれる前に、顔ごとヤツから逸らした。
「ああでも。そんだけケガしてたら、口ん中も切れてるか」
食べんのもつれぇかもな、と勝手に納得しようとしやがった。
「ウッセェわッ!! こんなん全然平気だわ!! 辛いモンだろーが何杯でもおかわりできるわッ!! つーかケガだらけなんはテメェもだろがッッ!!」
ナメんな、と怒鳴れば、僅かにだけ目を見開いた轟の視線が返る。
「……爆豪はすげぇな。俺は辛いモン、あんま得意じゃねぇ。冷たい蕎麦なら何杯でもいけそうなんだが――」
「知るかァッ!! テメェの事なんか興味ねェわァァァッ!」
マジでよく喋るこの口を、爆破してやろうかと思う。
睨み怒鳴った俺を見て、轟はそれでも微笑を浮かべた。
「そっか……。――俺は、興味あるけどな。爆豪のこと……」
顔を前へと向けた轟に、毒気を抜かれる。このモヤモヤをどうして良いか判らずに、俺はガシガシと頭を掻いた。
「……――ったく。何なんだよテメェは。冷たくあしらっても怒鳴っても、何度も話しかけてきやがって。どMなんか。こうされると萌えんのか」