かっちゃん僕はッ、君を応援したいんだッ!! 8


 

 僕の言葉に振り返りかけて、けれどもかっちゃんは、前を向き続けた。

 

「そうだ! ないてねェ!!」

 

「ないてないッ!!」

 

「いやいや、フザけんな」

 

「ないてない!!」

 

 あまりに僕達が「泣いてない」と繰り返し続けたから、中学生達が根負けして。

 

 オールマイトの人形から足をどけると、悪態を吐きながら立ち去って行った。

 

「ん」

 

 かっちゃんの泥まみれの手が、地面に座り込んだままの僕の視界に入る。

 

 オールマイトの人形を、僕へと突き出していた。

 

 見上げれば、もう一方の手で鼻血をこするかっちゃんの顔が、僕を見下ろしている。

 

「あ、あり……ありがとう……」

 

 僕は滅茶苦茶に泣きながら、かっちゃんの泥まみれの手ごと――両手でオールマイトの人形を包み込んだんだ。

 

 

 

 

 

「かっちゃんは……かっちゃんはズルいよッ!!」

 

「あァッ!?」

 

「手を伸ばせば届くのに! 伸ばさないで、いつも受け身で!!」

 

 涙が、溢れそうになる。

 

 自分の声が震えていくのを、自覚していた。

 

「何、ワケ解んねぇコト――」

 

 胸倉を掴んだままで怪訝そうに顔を顰めたかっちゃんを、滲む視界で睨み返す。

 

「僕には絶対くれない『場所』を、轟くんには空けてるクセに! 僕には望んでくれない言葉を、轟くんからは、聞きたいクセに!!」

 

 目を剥いたまま凝視してくるかっちゃんを、これ以上は見返せず――腕で目を擦った。