宿運 扉4


 

「何言ってんの。俺と二つしか違わない未成年が。それにこれ、俺に教えたのあんたでしょうが」

 

  呆れて言う俺に、孝亮がククッとくぐもった笑い声をあげる。

 

 「そうだっけ?」

 

  ワザとらしくとぼけてみせて、孝亮は新しいタバコを取り出した。

 

 「僚紘。火」

 

 「なになに。自分で火ぐらい着けらんねぇのかよ、あんたは」

 

  孝亮のタバコにライターを差し出しながら、溜め息混じりに言ってやる。

 

 「さあてね。イヤなら、出さなくてもいんだぜ。別によ」

 

  重い瞼を閉じるようにして笑う孝亮は、美味そうにタバコをのんでいる。それを見ていられなくて、俺は視線を逸らした。悔しさに、唇を噛む。

 

 「なあ、孝亮」

 

 「ん?」

 

  顎を上げてフゥッと煙を吐く孝亮を、チラリと見る。

 

 「ここを出て行くってのは、ホントなのかよ?」

 

 「ああ?」

 

 「昨日おばさんに会ったら、あんたが家を出るって言ってるって……」

 

 足を組んだ孝亮は、そこに肘をついて顎を支えた。

 

 「ホントだとも。やっと高校も卒業した事だしな」

 

  なんでもない事のように言って口の端でタバコを咥えると、俺を見てニンマリと笑う。

 

 「何かご不満でも?」

 

「……なんでだよ」

 

 「なに?」

 

  高校を卒業するというのに、進学も就職もしない孝亮を不思議に思ってはいた。だが、いつものいい加減な性格が出ただけなのだと思っていたから。

 


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