元々孝亮は、兄貴の友達だ。孝亮の死でショックを受けているのは、兄貴も俺と一緒だった。俺同様、辛そうな顔をしている兄貴なんて、見たくなかった。
だが予想を反した声が、上から降り注ぐ。
「おい。クソガキ」
訊き慣れた声に、忘れられないその声に、俺は飛び起きた。
そこには、やはり思ったとおりの人物が、立って俺を見下ろしていた。
「ウソだろ! おい。……孝亮! あんた、死んだはずじゃあ…」
腕を組んだ孝亮は、カカッと笑って、片足をベッドの上に乗せた。
「ああ。死んだとも! 俺、幽霊なの。知ってっか? 幽霊にも足がちゃんとあんだぜ?」
その足に腕をついて、俺に顔を近付けてくる。
「実は俺。ホントは、お前の顔も見たくねぇんだ」
ニヤリと笑いなから、孝亮は囁くように低く言う。
「またそんな悪態コト言って。……死んでも変わんないのな、あんたは」
暗闇に立つ、いつもと変わらぬ親友の姿。それを確かめるように伸ばした手を、孝亮が弾き返した。
「一言だけ言いたくて、ここへ来たんだ。それだけ言ったら、俺は消えてやんよ」
俺の胸倉を掴んだ孝亮は、さらに顔を近付けてきた。
「お前、昼間あの十字路に来ただろう」
「え…、ああ」