「爆豪ッ!」
轟くんが、咎めるようにかっちゃんの腕を握る。
「お前さっきから。緑谷にあたるなよ」
けれどその手はすぐさま、舌打ちと共に振り払われた。
「ウッセ!! テメェら二人ともウゼェわッ!」
もうついてくんな、とエレベーターへと乗り込む。振り返る事なく扉は閉まり、上がっていった。
「かっちゃん!!」
このまま一人にしたらダメだと、心の内の僕が訴える。
その声に従って走り出し、階段を駆け上がる僕に、「おい、緑谷」と轟くんが続いた。
「……わりぃな、緑谷。俺と爆豪の事で、お前にまで嫌な思いさせちまって」
隣に並んで駆け上がる轟くんの言葉に、息が詰まる。
――俺と爆豪の事で。
その、彼にしたら何気なく言っただろう言葉が、ゆっくりと――ゆっくりと。
僕の胸を締め付けていく。
「う……ううん。かっちゃんが、先に轟くんに嫌な思いさせちゃったんだもん。謝るのは、こっちの方だよ」
「え?」
言ってから、「しまった!」と思った。
一緒に階段を駆け上がる、轟くんの視線を横から感じる。
――なんで緑谷が謝るんだ?
僕が見返せない『彼の視線』はきっと、そう言っているから。
もし、口に出されてしまったら……。
『だって僕、かっちゃんの幼馴染だから』
『僕がいた事できっと、かっちゃんの怒りを煽っちゃったから』
幾つかの言い訳を、即座に考えてみる。
けれどもどれも、不自然で。
轟くんを納得させられるとは思えなかった。
けれど。
「…………そうか」
轟くんはそれだけを呟いて、顔を前へと戻した。