夢幻の忘却3


 

「1人で持って帰れるか?」

 

 立ち止まり訊いてきたミケに「ああ」と短く答え、リヴァイはミケが持ってくれていた袋を受け取る。

 

「鍵は職員室に返しておくから、調理室で作ってから持って帰っても構わないだろ?」

 

 光熱費もバカにならないんだ、と肩を竦めたリヴァイに、何かを言いかけミケが口を閉ざす。

 

 何を言いかけたのかは知らないが、言いたかっただろう事とは別だと思える言葉を口にした。

 

「……構わないが、ヤケドには気をつけろよ」

 

 お前はたまに抜けている時があるから、と小さく笑う。

 

「どこか! ヤケドだって1度だけじゃないか」

 

「1度でもあるなら、大口を叩ける立場ではないな。とにかく気をつけろ」

 

「信用ないんだな。クソが」

 

 視線を逸らせ舌打ちしたリヴァイに、ミケがふっと笑み零した。

 

「なんだ。まだ何か笑うネタでもあったか」

 

 不満そうなリヴァイに「いいや、懐かしかっただけだ」と足を止める。

 

「なんだそりゃ?」

 

 しかし足を止めたままのミケは、リヴァイの声に答える気はないらしい。それどころか、今まで会話していたのを忘れたかのように動かなくなった。

 

「?」

 

 行方不明者の貼り紙をじっと見つめて動かなくなったミケの顔を、「どうした?」と覗き込む。

 


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