怒りのままに睨みつけてくるかっちゃんを、睨み返す。
震えようとする足を、懸命に踏ん張った。
今、座り込んじゃいけない。
負けちゃいけない。
あの時のかっちゃんが受け留めた怖さに比べたら。痛みに比べたら――。
こんなの全然、へっちゃらだった。
あれは、まだ僕等が小学校に上がって間もない頃。
オールマイトの話で盛り上がって。
僕達は公園を駆け回っていた。
どんくさい僕は、柄のよくない中学生にぶつかって。
「ご……めん、なさい」
謝ったけれど、震える僕の声は彼等には聞こえなかったようだった。
「あぁ? どこ見てんだガキ!!」
ドンッと押されて、僕は尻餅をついて。
僕の手から落ちたオールマイトの人形は、中学生に踏ん付けられた。
「謝れ!!」
恫喝する声に、他の子達はビビッて逃げて。
だけどかっちゃんだけは、その場に留まった。
「やめろやッ!!」
オールマイトの人形の上に乗せられたままの、中学生の足に飛びついて引き剥がそうとする。
「さわるなガキッ!」
中学生が振り払うように、かっちゃんを蹴った。
「いっ……」
蹴った足が、鼻へと当たって。
「かっちゃん!!」
僕の隣に転がったかっちゃんが、体を起こす。
鼻からボタボタと落ちる鼻血に、僕は震えが止まらなくて。
けれどもかっちゃんは、ごしっ、と腕で血の出てる鼻を擦ると、僕を庇うように前へと立った。