一人っ子だった孝亮の代わりに、毎日おばさんの手料理を食べる。きっとまだ食べたかっただろう孝亮の代わりに。そして、もっと孝亮に食べて欲しかっただろう、おばさんの為に。
「お前も一回、御馳走になってみれば?」
征志を見てニヤリと笑う俺に、片眉をヒョイと上げる。仕方ないというふうに短い溜め息を吐いて、征志は歩き出した。
「ま、いいか。直接害はなさそうだし……な」
言いながらも何かが引っかかるのか、おかしな顔をする。
「なんだよ、変なカオして。やっかいな奴なのか? まさかまた……鬼、とか?」
「ん。いや、彼は人間だよ。でも……なんか……」
「ああ、とりあえず。オバケが男だってコトだけは解った」
等閑に頷く。その横で、征志が突然立ち止まった。俺の両肩を掴んでジッと顔を覗き込みながら、ゆっくりと目を細めていく。
「……ちょっ…」
こいつがこの目をする時はヤバい。これは、何かを探ろうとしてる目だ。その上、その対象が俺だなんて、まったく、ジョーダンじゃねぇ。
「な、なんだよ。カンベンしてくれよ。俺、関係ねぇだろッ」
両手で征志を押しやって、未練がましく上目使いで俺を見る征志を睨み返す。