「目障りだ! よけいな事すんじゃねぇ。いいか、あの場所へは、二度と来んじゃねぇぞ!」
カッと目を見開き低く言った孝亮は、突き放すようにして胸倉から手を離した。
「なんで……そんな事……」
「ああ?」
「だって! あそこはあんたを見た最後の場所じゃないか。あんたの『思い』が残ってる場所じゃないか!」
「あんな場所にッ、俺の思いは残ってやしないッ!」
聞いた事もないような鋭い声に、見た事もない程険しい顔に、俺は動けなくなった。
「俺等はもう、親友じゃねぇ! 俺は死んだんだぜ。……おい、知ってるか? バカ野郎が! 俺はなあ、あの晩、お前さえケツに乗せてなかったら、死ぬ事もなかったんだぜ! 今も、テメェの所為で地獄へも行けやしねぇ!」
「違う! 俺等は親友だッ!」
シーツを掴んで叫んだ俺に、孝亮が目を剥いた。ガッと、勢いよくベッドを蹴り上げる。
「寝ぼけてんじゃねぇぞ! いいか! あそこへは、もう二度と来んじゃねぇ! もし来たら……」
ベッドに手をついて、ズイと顔を寄せてくる。
「お前のその命。無いものと思え!」
俺の頬のキズを右手でなぞり、孝亮はそのまま姿を消した。