「何言ってんの。俺と二つしか違わない未成年が。それにこれ、俺に教えたのあんたでしょうが」
呆れて言う俺に、孝亮がククッとくぐもった笑い声をあげる。
「そうだっけ?」
ワザとらしくとぼけてみせて、孝亮は新しいタバコを取り出した。
「僚紘。火」
「なになに。自分で火ぐらい着けらんねぇのかよ、あんたは」
孝亮のタバコにライターを差し出しながら、溜め息混じりに言ってやる。
「さあてね。イヤなら、出さなくてもいんだぜ。別によ」
重い瞼を閉じるようにして笑う孝亮は、美味そうにタバコをのんでいる。それを見ていられなくて、俺は視線を逸らした。悔しさに、唇を噛む。
「なあ、孝亮」
「ん?」
顎を上げてフゥッと煙を吐く孝亮を、チラリと見る。
「ここを出て行くってのは、ホントなのかよ?」
「ああ?」
「昨日おばさんに会ったら、あんたが家を出るって言ってるって……」
足を組んだ孝亮は、そこに肘をついて顎を支えた。
「ホントだとも。やっと高校も卒業した事だしな」
なんでもない事のように言って口の端でタバコを咥えると、俺を見てニンマリと笑う。
「何かご不満でも?」
「……なんでだよ」
「なに?」
高校を卒業するというのに、進学も就職もしない孝亮を不思議に思ってはいた。だが、いつものいい加減な性格が出ただけなのだと思っていたから。