「お前を助けたのは、上宮だぜ。俺はお前が死んでも、別によかったんだがな」
俺の台詞を遮って、孝亮が不機嫌に言う。
「じゃあ、なんであの時、俺を突き落としたのさ?」
「ああ?」
「俺を助けたから、あんた死んじまったんじゃないか。あん時、俺が死んでりゃ…」
「ああ。あれね」
そう言うと孝亮は、カラカラと大声で笑いだした。
「いや、悪ィ。あん時はお前を助けようとしたんじゃなくて、お前を落としゃ、俺は助かると思ったのさ!」
「えっ、ウソ」
「ホント」
たっはっはっと笑って、俺の右頬を抓る。
「そんな顔すんなよ。俺ってこんな奴なんだからよ!」
俺の肩に肘を乗せて、孝亮は上宮に体を向けた。
「上宮、今拾ってきた物は何だ? さっき確か、光ってたろ」
言って、上宮が差し出した、掌の上の丸く平たい物を覗き込む。
「何だ? これ」
「銅鏡だよ」
大きさは厚み一センチ、直径十センチ程。星のような模様のまわりに、細かい文字のような物が彫られている。それをひっくり返すと、なるほど、鏡になっていた。
「へぇー、初めて見た。教科書でしか、知らないモンな」
「神社にも奉(まつ)ってあるよ、もっと大きいのが。御神体としてね」
感心する孝亮を上目使いに見遣って、上宮が説明する。