「死ぬのをやめたきゃ、か」
缶ビールの入った袋を提げ、所々居酒屋やスナックの明かりが漏れる街中をトボトボと歩く。
「何が、したいんだろな。俺は」
死にたい訳じゃない。それは確かだ……。
死ぬ気なら、あの時。孝亮の死を知らされたあの時に、俺はそうしていた。
右手で、左腕をギュッと握る。
あいつが、本当は何を望んでるのか。それを、確かめてやる。
「…孝亮。……俺は…!」
お前が生きろと言うのなら、何の価値もないこの人生を生き抜いてやる。そしてお前が望むなら、いくらだって死んでやる。苦しんで死ぬのが望みなら、苦しみ抜いて、地獄へも行ってやる。だから……。
だからもう一度、俺の前に出てきてくれ。
顔を上げた目には、あの場所が……。俺の一番大事だったモノを奪った、あの場所が見えてくる。
ガードレールには、これ見よがしに花束や菓子が多く飾られていた。
「知らなかったな、あいつがこんなに人気者だったなんて」
ククッと薄く笑いなからも、何かが引っ掛かる。ここに供え物をした何人が、孝亮の事を知っているのだろうか。あの事故から一月半も経ってるってのに……。孝亮にこんな多くの友人がいるとも思えない。
「孝亮が、こんなの喜ぶかっての」