吐き捨てるように言って、俺は足を止めた。
……妙な気配が、後ろから漂ってくる。
無視しきれない程の強い意志。悪意ではないが、どうも怒りのようなモノが含まれている気がする。
「……まさか…」
振り向いて、俺は目眩を起こしそうになった。
「おい、カンベンしてくれよ。ストーカーかぁ、お前は?」
両手で頭を抱える。俺の真後ろ。一メートルも離れてない所に、さっきの上宮とか言う奴が立っているのだ。
しゃがみ込む俺に、さっきとは打って変わって、冷たい声が降り注ぐ。
「期待を裏切って悪いが、俺の家もこの道なんだ」
ツイと俺の横を通り過ぎる。二、三歩歩いて、顔だけで振り返った。
「さっきは悪かったな。死ぬなり何なり、好きにしてくれ」
えらく険のある言い方をしてヒラヒラと手を振ると、プイッと歩き出す。
その後ろ姿が妙にシャクに触って、俺は勢いよく立ち上がった。
「なんだよ、お前に何が判るってんだよッ」
俺の声に、ピタリと足を止める。振り向いた男は、不機嫌を隠そうともせず、眉尻を上げた。
「そっちこそ、何も知らないだろ? やっと捜し出したってのに……。そいつが、自殺志願者だったなんてな」