「強くても、ロボットじゃねぇんだ」
涙を流してくれていたなら、心配なんてしない。
何も流さず、洩らさず、中に溜めている事が、気になって仕方がなかった。
「……なぁ爆豪、知ってるか? 掌を見せるって行為は、『私の心を見せますよ』『あなたに嘘はついていませんよ』っていう意味らしいぞ」
己の掌を爆豪に見せながら言うと、更に「訳が解らない」と言いたげな瞳が返った。
「だから――」
手を下ろして、指を絡めるようにして、爆豪の掌を握る。
――だからきっと。掌同士を触れ合わせるって事は、心同士を見せ合うって事に違いねぇんだ。
「テメェッ!!」
大きく声を荒げた爆豪に、前を行く4人が振り返った。
「あァッ? んだ? 振り返ってんじゃねーぞコラ。目立つだろうが。前見て歩けやクソがッ」
周りから注目されるのは、爆豪としても避けたいらしい。
「お前とは、ちゃんと心を見せ合いてぇ」
――心の中を、本当の事を、知りてぇ。
小さく伝えた俺に、爆豪がグッと奥歯を食いしばった。
「……十秒以内に放せや、この舐めプ野郎」
声を抑えて、爆豪が唸るように低く言う。
与えられた猶予は、十秒――。
「判った」
いーち、にーい、と数えだした俺に、「遅っせーわ!! ナメとんか!」と怒鳴った。