「はあ? それはいつもの事だろ? じゃなくて、最近知らない奴なんだけど、時間に関係なく同じ場所でいつも会う奴がいるとか」
「全然」
「変な夢を見るとか」
「まったく」
ブンブンと首を振る俺に、片眉を上げる。
「ほんとに?」
疑われてもどうしようもない。視えもしない幽霊に憑かれる心当たりもないし、最近変わった事なんて、なんにも……。
ん? いや。そう言えばあったかな? 昨日。
俺は考えながら、ポリポリと頭をかいた。
「あー、実は今朝。兄貴が変と言えば変な事を言ってた。俺はあいつが寝ぼけたんだと思ったんだけど」
「…ほう」
征志が鋭い視線を俺へと流して、まばたきで先を促うながす。
「昨日の夜中、喉が渇いたとかで電気もつけずに台所にいたらしいんだ。そしたら二階から階段を下りてくる俺の足音がして、玄関が閉まる音がしたって言うんだ。で、てっきり俺が夜中にこっそり外に行ったと思って、玄関を見たら鍵はかかってるし俺の靴もある。まさかと思って俺の部屋を覗いたら、俺はちゃんとベッドで寝てたって言うんだ。ま、当たり前だけど」