『無意識の内に、死を望んでる』
そうなんだろうか。俺は、孝亮の傍に行きたかったのか。命と、引き換えにしても……。
「とにかくもう寝ろ。夜中の二時半をまわってんぞ」
床に落ちているバスタオルを拾い上げてベッドの上に置いた兄貴が、背中を向けたままで言う。
「……あ! 征志ッ」
忘れてた、と頭を抱える。
「ああ?」
部屋を出て行こうとしていた兄貴が、怪訝そうに振り返った。
「いや。なんでも」
肩を竦すくめてドアを閉める兄貴を見送りながら、征志は大丈夫かと考える。
明日はあいつが学校に遅刻しても、怒らないでおこう。そう心に決めた俺は、パチリと電気を消した。
こんな夜中にまで付き合ってくれる友人と、うなされている俺を心配してくれる兄貴。
俺はきっと、幸せ者なんだと頭まで布団を引き上げた。
せめて、夢の中でなら、幻くらいは現れてくれるだろうか……。
「兄貴にだけ出るなんて、ズリィぞ」
クスクスと笑った俺は、ゆっくりと目を閉じた。