そうして「いいや」と首を横に振った。
ずっと向けられたままの探る視線から逃れるように、ミケは腕時計に視線を落とす。そうしてスンッと鼻を鳴らした。
「悪いが、そろそろ待ち合わせの時間だ」
「ああ。ここまで持ってもらって助かった」
両手の袋を軽く持ち上げて、リヴァイは礼を伝える。
「待ち合わせの場所には間に合うか?」
友人を待たしては悪いだろうと思い確認すれば、ミケは少し笑ったようだった。
「なんだ?」
怪訝に眉を寄せたリヴァイに、ミケは悪戯を含んだような視線を返す。
「心配はいらない。待ち合わせはそこだから」
指差す先を、何気に目で追った。
「あぁ、もう来ているのか」
早いな、と独り言のように呟きながらも、ミケは差した指を下ろさずにいる。だからリヴァイも、その方向を見たままでいた。
「彼が……俺の、友人だ」
指差す先を追って、まず目に入ったのがミケの言う『友人』だった。
ミケ程ではないかもしれないが、周りより頭1つデカい長身。やけに目立つ金髪は、夕陽に反射して眩しい程の光を放っていた。
「エルヴィン!」
呼びかけたミケの声に、反応したのはその友人だけではない。リヴァイまでもが、ハッとしていた。
ぼんやりしていた訳でも、考え事をしていた訳でもない。
それでも、ハッとした。
ただ言葉に出来ない『無』が、心に充満していたのだ。