オリジナル小説
このクソ寒いのに、どうして鳥はあんなに元気なんだ?
ピィービィーと甲高い声で鳴く、鳥を見上げる。
尾の長い茶色い鳥。それが木の枝にとまって、叫ぶように何度も何度も鳴いている。
一人での登校。友人の上宮 征志(かみつみや せいじ)は、相変わらずのさぼり癖を発揮していた。
最近では、一人での登校も慣れてしまっている。
――いや、元々は一人で通っていたのだ。
あいつが転校してくるまでは……。
征志は俺と知り合った次の日から、毎朝八時十五分に俺の家の前で俺を待つようになった。
べつに約束をしたわけじゃないが、征志が遅刻してこない日は、一緒に登校するのが当たり前の事となっていた。
征志と初めて会った日を思い出し、俺は、ほぅ…と白い息をゆっくりと吐き出した。
征志と知り合った日。
それは同時に俺の一番大切だった親友、孝亮(こうすけ)と会えなくなった日でもあった。
「三人だったら、もっと面白いのに……」
ポツリと呟く。己の左頬、縦にはいった大きな傷を、指先でなぞった。
随分と長い時間が過ぎた気がするのに、あの事故からまだ一年も経っていない。
「孝亮。お前のいない毎日は、とても……永いな」
胸の上で跳ねるように揺れる剣型のペンダントが、孝僚がよくやったように俺の胸を何度も叩く。
まるでしっかりしろと、孝亮が喝を入れているかのようだった。
ふと足を止め、顔を上げた。
――視線?
目を向けたその先。遠くに見える、高い塀に囲まれた白い家。その三階の開け放たれた窓から、少女がこちらを見ている。
祈るように胸のところで指を組み、じっとこちらを見つめていた。
「どうしたんだ?」
無意識に、疑問を吐く。
彼女は俺を見つめたまま、問いに答えるようにゆっくりと首を左右に振った。