「あ、かっちゃん。轟くん。おかえ、り……?」
夕刻。
補講先から寮へと帰ってきたかっちゃんが、僕には見向きもせずに前を通り過ぎてゆく。
「もうすぐ夕食の時間だ、けど」
何かあったの? と含んだ僕の顔を、かっちゃんを追って前を通り過ぎる轟くんが目だけで見返した。
「ああ」
小さく僕に答えて、けれども轟くんの視線は、すぐさまかっちゃんへと戻される。
「おい、爆豪。さっきの」
「うっせーなッ!! ハゲに相談すりゃいいだろが。親友なんだろ?」
「いや、あいつとは親友じゃねぇ。親友ってのはもっと――」
「どーでもええわ! 何回言わせんだ。とにかくあのハゲと話せや。話しかけてくんな!!」
「さっきから……なに怒ってんだよ爆豪。俺、なんかしたか?」
ギッ、と。
かっちゃんは轟くんを強く睨んでから、顔を逸らした。
「心当たりねェなら、それでいいだろが。とにかく俺に話しかけんなッ!!」
「……わりぃ」
グッと、かっちゃんが歯を食いしばる。
「ワリワリワリワリ……バカのひとつ憶えみてェに、テメェはよ――」
何ひとつ理解してねェくせしやがって、と悔しそうに洩らした。
「とにかく話しは終わりだ。ついてくんな」
背を向けたその声が、微かに震えている。
「かっちゃんッ!!」
そのまま行かせたくなくて、僕は大きく声を張り上げていた。