フウーと長く息を吐いた孝亮の口から、冷たい銀色の煙が夜の闇へと昇っていく。その行方を目で追うと、煙は空に浮かんだ月と同化して、消えていった。
木の柵に腰かけた孝亮の肩越しに、街のネオンがキラキラと光っている。
「この山からの夜景はイケるな」
呟いた俺に、孝亮はクスリと笑って、チラリと後ろのネオンを見遣った。
「なに? 僚紘。お前に景色を堪能する情緒なんてモンがあったのかよ?」
タバコをくわえたまま、目を伏せるようにした微笑み。
「バーカ! この景色を理解できないのは、あんたぐらいだよ」
言って、からかうような目で俺を見た孝亮の口から、タバコを奪い取る。
「だいたいなー、こんなトコに俺なんか連れて来てどーすんだよ。女に見せてやれよ、こんなモンは」
取り上げたタバコを咥える。ゆっくりと吸い込んで、ホゥと煙を吐き出した。
「カカッ。いんだよ、お前で。俺は景色じゃなく、バイク走らせに来たんだからよ。__それより、十六のガキがそんな美味そうにタバコを吸うんじゃねぇ」
その台詞に俺はフンと鼻を鳴らして、孝亮の隣へと腰を降ろした。